無指向点放射源(アイソトロピックアンテナ)とは?ダイポールアンテナとの違いやインピーダンスも解説

レーダ技術の基礎

アンテナ工学を学び始めると、「無指向点放射源(アイソトロピックアンテナ)」や「半波長ダイポールアンテナ」という言葉を頻繁に目にします。しかし、これらは実際に存在するアンテナなのか、また何が違うのか疑問に思う方も多いでしょう。

この記事では、無指向点放射源の考え方をはじめ、微少ダイポールアンテナ・半波長ダイポールアンテナの違い、そしてアンテナの入力インピーダンスの求め方まで解説します。


無指向点放射源(アイソトロピックアンテナ)とは

Image

無指向点放射源(Isotropic Radiator)とは、あらゆる方向へ均一に電波を放射する仮想的なアンテナです。

実際にはこのようなアンテナは存在せず、アンテナ性能を比較するための理想モデルとして定義されています。

もし送信電力が100 Wなら、そのエネルギーは球面全体へ均等に放射されます。

この球面の半径を (r) とすると、電力密度は

S=Pt/(4πr^2)

となります。

ここで

  • (S):電力密度(W/m²)
  • (P_t):送信電力(W)
  • (r):アンテナからの距離(m)

です。

アンテナ利得で使われるdBiは、この無指向点放射源を基準にしています。


ダイポールアンテナとは

Image

ダイポールアンテナは、2本の導体から構成される最も基本的なアンテナです。

多くのアンテナ設計や理論解析は、このダイポールアンテナを基準として発展してきました。

ダイポールアンテナには長さによっていくつかの種類があります。


微少ダイポールアンテナ

微少ダイポールアンテナは非常に短いダイポールアンテナです。

電流は導体全体で一定と仮定できるため、電磁界解析では最も扱いやすいモデルとなっています。

しかし放射効率は非常に低く、実際の通信で使用されることはほとんどありません。

理論解析や電磁界シミュレーションで広く利用されています。


半波長ダイポールアンテナ

半波長ダイポールは基本的な計算で良く用いられるアンテナです。

この長さでは共振状態となり、放射効率が高くなります。

そのため

  • FM放送
  • テレビ
  • アマチュア無線
  • アンテナ測定

など、多くの分野で利用されています。

自由空間での利得は

約2.15 dBi

となります。


微少ダイポールと半波長ダイポールの違い

項目微少ダイポール半波長ダイポール
長さλより十分短い約λ/2
用途理論解析実用アンテナ
放射効率低い高い
電流分布ほぼ一定中央最大・端で0
利得非常に小さい約2.15 dBi

dBiとdBdの違い

アンテナ利得には

  • dBi
  • dBd

の2種類があります。

dBiは無指向点放射源を基準とし、

dBdは半波長ダイポールを基準とします。

半波長ダイポールは

約2.15 dBi

であるためそこからの差をdBd表記とします。2.15dBi=0dBdです。

一級陸上無線技術士の試験などではこれは絶対利得と相対利得という名前として、

半波長と微少ダイポールの絶対利得、相対利得が問われます。


アンテナインピーダンスとは

アンテナにも交流回路と同様にインピーダンスがあります。

入力インピーダンスは

Z=R+jX

で表されます。

ここで

  • (R):抵抗成分
  • (X):リアクタンス成分

です。

抵抗成分はさらに

  • 放射抵抗
  • 損失抵抗

に分けられます。


半波長ダイポールの入力インピーダンス

自由空間に設置された半波長ダイポールでは

入力インピーダンスは

約73+j42.5Ω

となります。

一方、実際に共振長へ調整すると

リアクタンス成分はほぼ0となり、73+j0Ω程度になります。

そのため50 Ω同軸ケーブルとの整合も比較的容易です。


インピーダンスはどのように求めるのか

実際のアンテナでは、入力インピーダンスは理論式だけでなく、測定や電磁界シミュレーションによって求められます。

主な方法は次の3つです。

  • 理論計算:ダイポールなど解析解が存在するアンテナに適用。
  • 電磁界シミュレーション:MoM(Method of Moments)、FEM(Finite Element Method)、FDTD(Finite Difference Time Domain)などを用いて数値解析する。
  • 実測:ベクトルネットワークアナライザ(VNA)でSパラメータ(特に (S_{11}))を測定し、スミスチャートを用いて入力インピーダンスを求める。

近年のアンテナ設計では、シミュレーションで設計した後にVNAで測定して最終確認を行う方法が一般的です。


まとめ

無指向点放射源は、すべての方向へ均一に電波を放射する理想的な仮想アンテナであり、アンテナ利得の基準である dBi の基礎となっています。

一方、ダイポールアンテナは実際に製作・使用される基本アンテナであり、特に半波長ダイポールは放射効率が高く、多くの無線通信システムやアンテナ測定で基準アンテナとして利用されています。

また、アンテナの入力インピーダンスは、送信機との整合や反射損失を左右する重要な特性であり、理論解析・電磁界シミュレーション・VNAによる測定を組み合わせて評価されます。これらの基礎を理解することは、アンテナ設計やレーダ、無線通信システムを学ぶうえで欠かせない第一歩となります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました